はじめまして。産前産後ボール&フィットネスの白石あすかです。
当サイトをご覧くださりありがとうございます。
産前産後ボール&フィットネスは、「母となった私をより豊かに私らしく」をコンセプトに、運動と対話、仲間を通じて、心身の健康回復をお手伝いするレッスンや講座を提供しています。
「産んだらこの重たい体とつわりから解放される」
第一子妊娠中、そんなふうに思っていた私を待っていたのは、味わったことのない痛みとしんどさでした。幼い頃から踊ることに夢中で、体力には自信のあった私でしたが、出産直後はうまくいかない授乳と細切れの睡眠で心身ともにすり減りボロボロに。体重はほぼ元に戻ったはずなのに、シルエットは妊婦のまま。体は重だるいし、骨盤は開きっぱなしでウエストのボタンが閉まらない…
とことんイケてない姿なうえ、母乳もうまいことあげられないなんて母親失格、と気持ちもどんどん落ち込んでいきました。ままならない自分への苛立ちを夫に向け、顔を合わせれば八つ当たり。体も心も自分が自分でなくなってしまったようで、しだいに自尊心も失われていきました。
つわりから解放されて、身軽になって、夫婦仲良くかわいい我が子を迎えた幸せな家族…なんて思い描いていた姿からは程遠く、現実は、寝不足と孤独にさらされ、崩壊ギリギリの状態でした。
産後のリアル 母体とメンタル
日本の母子保健は、赤ちゃんの予防接種や検診などには手厚いものの、母親のケアはまだまだ充分とはいえません。どんなに大安産の人でも、出産後の体は目に見えないところで全治1ヶ月に相当するダメージを負っており、産褥期(さんじょくき)といわれる時期、特に3〜4週間くらいは、しっかり体を横たえて静養する必要があります。
ところが、実際のところは育児に家事にと動き回ってしまう産婦は少なくありません。かくいう私も、里帰りという環境にありながら、母の心遣いも無視してあれこれ動いていました。その結果、体に大きく負担がかかり悪露(おろ)が長引いてしまいました。
外出できるようになり、ドキドキしながらデビューした赤ちゃん会。「お名前は?」と訊かれて「あすかです」と答えたら、「あ、いえ…息子さんの…」と気まずい空気に。赤っ恥をかいたことは今でもよく覚えています(苦笑)どこにいっても「お母さん」「〇〇ちゃんのママ」と自分の名前で呼ばれることはなく、アイデンティティを失ったようなそんな感覚にも孤独を感じました。
周りはみんな育児を楽しんでいる(ように見える)のに、母となったことを素直に喜べない自分にまたへこむのでした。
産後ケアとの出会い
そんな私が、母となっても心から私らしくいられるようになったのは、「産後はダイエットではなくリハビリ」という考え、そして誰かに施してもらうのではない「自ら取り組む産後ケア」との出会いでした。
産後のリアルな心と体の変化とアプローチの方法を学んだことで、産後心身とも辛かった原因は「睡眠不足」と「体力低下」だと気付きました。原因を取り除くと、驚くほど前向きになれるのを実感、母として、人としての尊厳も取り戻すことができました。私の至らなさのせいではなくて、知識と静養、リハビリが足りなかったんだと知り、救われたような気持ちと、もっと早く知りたかったという憤りとが入り交じったあの感情。
そのインパクトは大きく、気づけば初めて講座に参加したその日に「私、インストラクターになります!」と宣言していました(笑)第二子、第三子を授かれたのも、再び産後を迎える心構えができたから。でなければ、二度とあんなしんどい思いはしたくない…と長男は一人っ子だったかもしれません。
静養とリハビリ 運動と対話
私の経験からもわかるように、産後に起こる体力低下、生活環境の変化、アイデンティティの喪失は母の心身に大きな影響を及ぼします。しかしそのことを知らなければ、心構えのしようがありません。産後の備えは、なんとかなるとたかを括らず、妊娠中、それ以前から「知る」「取り組む」ことがカギとなります。
また静養していた人がいきなりバリバリ動けるようにはなりません。段階を追ったリハビリが必要です。そこでオススメなのが「バランスボール」!バランスボールを使った有酸素運動は、妊娠中や産後の体に負担をかけずに適切な負荷をかけることができ、筋力・体力の回復を促し、軽いうつ症状を解消する効果があります。運動が好きな人も苦手な人も、リズム感がある人もない人も「母」という共通点でつながり、一緒に弾んで汗を流すのがボール&フィットネスの醍醐味です。
「自ら取り組むケア」は運動に限った話ではありません。自分の内面と向き合い、人との関わり言葉をつむぐ、産後ほど縁遠くなる「対話」もまた欠かせない要素です。グチを言ってスッキリ、傷を舐め合う、茶化して本音をごまかすのとは違い、「私」を主語に自分の考えを自分の言葉で語る。他者と思いを分かち合う。悶々とした葛藤や焦りも、言語化することで、その根っこにある心からの望みに触れ、自分でも気づいていない発見があったり、真摯に語る仲間の言葉に力をもらったりします。
産後は自分をアップグレードさせ、新たな私に出会うチャンスにもなるんです。
私と出会い、仲間と出会う場を
産後ケアに取り組めば、まったく不調がなくなるわけではありません。しかし、正しい知識を持つことで、ある程度未然に防ぐことができます。不調の対処法を知っていればこじらせずに済むし、うまくつき合えるようにもなります。この差はとても大きいです。
はじめは不安そうに赤ちゃん抱えながらスタジオを訪ねてくださった方が、少しずつ体力と言葉を取り戻し、仲間と励まし支え合う様子、ありのままを受け止め自分自身のことも大切にしながら、社会に復帰していく姿をたくさん目の当たりにしてきました。
レッスンではよく「元気をもらった」と言っていただくことが多いのですが、みなさんからパワーをもらっているのは私も同じです。
少しかたい話をすると、産後ケアの不足によって起こるマタニティブルー、産後うつ、夫婦不和、乳児虐待、マミートラックなどといった社会課題解決のためにも当事者に限らず社会全体への啓発がもっともっと必要です。
このような背景はありますが、そんなことはあまり深く考えず、ただシンプルに「体を動かす」、これだけでウソのように心身が軽くなる。そんな体験をしてほしいのです。そして、そのときの心の動きを言葉にして分かち合っていただく瞬間が愛おしく、そんな場づくりをしたくてこの活動をしています。
産後ケアを地域に根付かせると同時に、これからのニーズにあわせて、場所を問わずに誰もが産後ケアに取り組めること、そして妊娠する前から産後のその先も、長く心身の健康をサポートできるよう努めてまいります。
それぞれが思い描く「豊かさ」「私らしさ」に近づけるよう、みなさんにそっと寄り添わせてください。